モニュメントバレー ☆ナチュラル・ボディーセパレート・イリュージョンへの挑戦☆ アメリカ大陸・ラスベガスから600マイル余り、およそ10時間車を走らせ、ルート１６３号にハンド ルを切ると、アリゾナ砂漠に忽然と現れたのはモニュメントバレーだった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そこは生と死の極限の地と言われ、インディアンのナバホ族がその歴史を終えた所である。　　　　　　 西部劇で見慣れたその景色を目の当たりにして、子供の頃に見た映画の世界にタイムスリップ したかのようで感動的だ。広大な大平原に人影はない。輝く太陽と真っ青な大空はどこまでも続 いていた。ふと車を止め、外に出た。モニュメントバレーを見上げ旅行カバンを置く。そこは身の 引き締まるような緊張感が漂っている。まるでインディアンの酋長と会っているみたいだ。ナバホ 族はイーグルを全能の神として崇めていた事を思い出す。無言の時間が過ぎてゆく。しかし、少 しも飽きることはない。ナチュラル・ボディーセパーレート・イリュージョンを行う時が間近に迫って いるような予感を感じていた。私は思わずインディアンの祈りの誌を口ずさむ。　　　 おおイーグルよ　　その翼で大空を飛び未来の事を知らせておくれ！　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおイーグルよ　　ここに来て新しい魔術をもたらしておくれ！　　　　　 するとモニュメントバレーの頂上付近から一羽のイーグルが私を目がけて飛んで来た。これがイ ンディアンの守り神とされたイーグルなのか？ 低空飛行のイーグルは私の胴体をかすめて遥か 彼方へ飛び去った。その瞬間、ふわりと何かが浮かび上がった。何と私の上半身が空中に浮か んでいるではないか！次の瞬間、下半身が分離されて歩き出した。これぞまさしくナチュラル・ボ ディーセパレート・イリュージョン。どの位時間が経ったのか、どこからか又あのイーグルが飛んで 来て、離れた私の体を通り過ぎた瞬間、私の体はゆっくりと又元の通りに戻って行った。夢でも見 ていたのだろうか？そうだ！これが私の念願だったナチュラル・ボディーセパレート・イリュージョン であったのだ！！私は感動で体の震えが止まらなかった。あたりはすっかり夕暮れ時を迎えてい た。私は再び旅行カバンを手に取ると車に乗り込み、一路ラスベガスへとアクセルを踏む。寒い！ 砂漠特有の気温の低下だ。風も強くなってきた。すると突然砂嵐が車窓を襲う。黄色い砂が一斉 にフロントガラスをたたく。外は真っ白な世界となり一歩も動く事が出来なくなった。しばらく車を止 めてやり過ごす。ふとモニュメントバレーが気に掛かり、振り返るとあのモニュメントバレーは砂嵐 でかき消され、完全に消失していた。 　　　ルーフ広宣