今回のネパール訪問は、私の要望通り過密スケジュールとなり、日本人が経営するホテルに宿泊する事となった。（1日目）小、中学校での出演。（2日目）ネパールのマザーテレサとの記者会見、及び出演。（3日目）中、高一貫校での出演。（4日目）ネパール・日本国交樹立50周年記念式典（政府主催）にＶＩＰとして参加、政府主催の晩餐会に特別出演。 （5日目）民間団体の記念総会に特別出演とネパール・日本国交樹立50周年記念 　「ルーフ広宣 チャリティーショー（ Mｕｓｉｃ ＆ Ｍａｇｉｃ ）」出演。

　私がネパールに到着した翌日、思いがけずネパール国首相とマオイストとの平和調印式が突然始まり、その模様は全ネパールに放映された!  その翌日は興奮冷めやらぬ民衆が外套で大集会を自発的に開いていた。朝、私達一行は車でホテルを出ると、目抜き通りの中心部に大きい交差点があり、その中の公園には既に多くの民衆が集まり、思い思いの演説をしている光景に出会う。何故かこの日、男性の着ているシャツに赤が目立つ。長年の夢であったマオイストとの和解は、彼等に一機に平和実現の兆しをもたらしたのだ!  祖国ネパールの平和と発展を願う彼等の熱きハートは、外国人である我々にまで飛び火した!  私もこの熱き思いで、その日のスケジュールである名門小、中学校へと向かった。

　到着すると、ゲートでは綺麗に化粧し着飾った少女達に花束をもらうと、左右一列に並んだ輝く瞳の小中学生の間を縫って拍手と共に私は会場入りした。校庭にある野外ステージ前には、既に児童達が集まり今か今かと待っている。私達一行は校長室へと案内され、そこで校長先生が丁寧に挨拶された。礼儀正しいネパール人、ここはエリート養成校として有名だと話された。校庭では新聞記者も待ち構えていた。やがて私がステージに立つと大歓声に包まれた!

　私は過去の固定観念には左右されない、常に新しいマジックを追究している。皆それぞれがマジックの表現法が違う様に、それは私だけの世界!!  　 そう、名付けて「ルーフイズム・マジック! 」だ。マジックの一つ一つの現象に心から驚くと共に、昨夜の報道が子供達にも明るい笑顔をもたらしているのが分かる。汗だくとなり、大成功でステージを下りると、直ぐに子供達に囲まれて握手攻めとなる。汗ふく間もなく皆の握手に応じると、校舎から教師が走って来て校長室に戻るように促された。校長室に入ると、校長先生が私の首にオレンジ色のシルクの布を掛けてくれて感謝状をくれた!  滅多に外国人アーティストが来る事もないのか、皆心より喜んでもらう事が出来、初日のステージは無事に終了した。

　　　　　　　　 　　 　 　 　　　

　 翌日は、ネパールのマザーテレサと言われる年配の女性との記者会見であった。チャリティーショーを数日後に控えた前哨戦である。 賑やかな公園の中にある木立に囲まれた小会場には既に新聞記者達が待っていた。ネパール政府の関係者達と壇上に座り、ネパール語での会見が始まる。時折、通訳が説明してくれ、いよいよ私がマジックを披露する出番となった。サリー姿の女性や日本人らしき人も見守る中、私はオープニングのメロディーと共にスポットを浴びた!  見ている人達の殆どがマスコミ関係者である。 ネパールのマザーテレサは2人の孤児を連れて来ていた。 何でも、車で10時間、山道を揺られて来たそうだ。 2人の子は男女1人ずつで７〜８才位に見える。私のステージの、生まれて初めて見るマジックに感動しているようだった。子供の目は純粋で可愛らしい。

　 ネパールのマザーテレサの家には53人もの孤児が引き取られ、彼女一人で育てている。そして驚いた事に大学まで出した! と言う。その時、優しく彼女を労わる青年こそがその青年だと言って紹介された。　私は「次回ネパールに来たら、君の村に行き、孤児達にマジックを見せましょう! 」と告げると、とても嬉しそうに「是非、宜しくお願いします! 」と流暢な英語で言った。

　　　　　　　　　　　 　　 　 　

　 その後、私はホテルへと戻った。そこで待ち受けていたのは現地の新聞記者であった。その場で私の個人インタビューが始まり、その時に初めてネパール有力紙「カンティプル新聞」に、私がネパールに来てからの活動が既に報じられていたのを知らされた!

　 翌日は、名門高校へと向かった。 ５階建ての校舎に猫の額ほどの校庭、そこに私のステージスペースを設置すると言う。学生達は教室内から椅子を持ち出しステージの前に並べて皆が座っていた。私の控え室は５階、下から汗を拭きながら歩いて階段を上がる。この日も新聞記者が同伴し、私のステージを通訳してくれた。高校生達の熱気は直接伝わって来る。マジックの現象に対するリアクションも凄い勢いがあった。口笛と歓声の中、私のマジックショーも大成功! 昼の校庭は熱い日差しが容赦無く照り付けていた。終わると同時に学生達は駆け寄り、握手やサインを求めて来た。教師陣や警備員達までもがニコニコ感謝の眼差しで近寄って来た。私は皆にお礼を言うと車に乗り込み、その日のスケジュールを終え、ホテルに戻った。
　
　すると、そこで私を待ち構えていたのは日本大使館（現地ネパール人職員）達であった!  実は、その翌日は、カトマンズのサッカー場にて、ネパール政府主催の「ネパール・日本国交樹立５０周年の式典」が予定されていた。５０周年の佳節に受賞する日本人マジシャンがいる事を聞きつけ、私をVIPとして招待したい!　との申し出から私のホテルに突然訪れたのだった。私は快く対応し彼等に求められてホテルのロビーでマジックを披露した。すると、翌日の王家のホテルでの晩餐会に是非、特別出演してほしい!　と依頼された。 思い掛けない光栄な申し出に私は喜んで応じたのである!   私は快諾するとVIPの招待状をもらい記念のカメラに収まり、翌日の式典会場での再会を約束した。

　 翌日も大晴天の中、迎えの車に乗り込みサッカー場へと向かう。大勢の人々がそこへ向かってゾロゾロ歩いていた。私達の車は警備の壁を破り、サッカー場内へと入場する。　会場にはサリー姿の美しい女性達や和服を着た日本人らしき女性の姿も目立つ、そして日本大使や橋本元首相の夫人達も同席された。華やかなファンファーレと共に和太鼓の響きがサッカー場内に流れると、一斉に踊り子達が走りながらサッカー場一杯に広がった。華麗なる式典のオープニングに人々は満場の拍手を送った。日本やネパールを代表する来賓の挨拶やネパールの有名な歌手による日本の歌など盛り沢山の式典であった。この模様は全ネパールにテレビ中継されたのである。

　　　 　　　 　　

　 その日の夜は、ネパール国政府が主催する晩餐会が王宮のクラウンホテルで華やかに開催された。　 私もVIPの一人として招かれたばかりか、幸運にもディナーショーに特別出演する事となり、招かれたVIPの前でマジックショーを演じる事が出来た。わざわざ私の為にVIP控え室をセッティングしてくれ仕込を始めると、スタッフが私に「緊張していますか？」と言ってきた。　本来、プロであるからには、緊張感を持って全うする事であり、緊張していないなんて言う人はいないはずである!  プロ格闘家がリングに上がるのと同じで、リング内で何があるか分からない真剣勝負に挑む心境そのものなのである。その様に、ステージもリングのリアルファイトに例える事が出来るのだ!　

　　　　 　　 　　
　

　 さぁ、いよいよ私の出番となった。　 特設ステージには、私の為に特別の音響スタッフが付き、素晴らしい音を出してくれた。マジックショーが始まるや否や、VIP達は上機嫌で私のステージを取り囲み拍手喝采してくれたのには驚いた!   感動には人の上下は無いと知り、ほっとする。この日はとても長い一日のように感じた。マジックショーが大成功で日本大使初めVIPの大歓声の元、無事にステージを降り控え室に戻ると、私のスタッフも皆、私同様に緊張の糸がほぐれ、お互いの目と目を見合わせ脱力した。そこには大きな仕事をやり終えた安堵感とビクトリーを手にした感動が、いつまでもいつまでも冷めやらなかった!   すぐに昨夜の大使館職員達やスタッフ、ホテルの支配人等がわざわざ挨拶に来てくれた。皆に握手を求められお礼の言葉を頂いた。その後しばらく放心状態となり、気が付いた時には殆どの来賓は会場を後にしていた。スタッフに促されて会場を後に車に乗り込むと、涼しい風と満天の星が私を迎えてくれた。大きい仕事をやり終えた満足感で一杯だったが、明日はチャリティショー本番である!  それを思うと身震いする。そして更に気を引き締めた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　翌日も大晴天、乾期のネパールは連日、青空が広がる。夜のチャリティーショーまで少し間があると油断していた私に、緊急にマジックショーの依頼が飛び込む。何とそれは午前中の出番!　しかし全てをやり切る!  と誓った以上、それも快諾すると、朝風呂を諦めて、直ぐにマジックの仕込みに入る。すると全身から汗が吹き出て来る。１１月とは言え、ネパールの気候は日本の７月位の気温である。半袖で丁度良い。しかし私の衣装はコートなのである!  素早く車に乗り込むと、ガタガタ道を丘の上の方へと上がって行く。殆ど舗装されていないのだ。洋館の前で車が止まると、中央階段をサリー服姿の女性が下りて来た。今日はこの会館の中で３００人程の集会があり、３０分のマジックショーを演じる事となった。洋館は３階建てで最上階まで続く階段を一気に昇ると、日本と同じ様に靴を脱いで中に入った。そこには大広間があり、ステージも付いていた。既に人々は集合し、開会を待っている。私は直ぐ控え室に入り、急いで仕込みをする。あっという間に出番だと知らされた。満場の拍手の中、私はステージに上がった。日本からわざわざ遠路をやって来た私にとって、この拍手は暖かった!  皆の輝く瞳は大人も子供も同じ、この国の人々の心の美しさが伺い知れた。この団体は、世界平和を目的とし、世界最高峰の東洋哲学を学び実践している崇高な団体であったのだ!   　　彼等の言う「共生の精神で世界平和は実現出来る! 」と言う主張には、私も同感だ!  　　 私がネパールに来た目的もここにあった!   と言っても良い。この総会に出演出来た事を大変光栄に思った。皆の大喝采の中、無事にマジックショーを終えると、皆との記念写真に収まり私はホテルに戻ったのである。

　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　ホテルに戻ると、従業員が新聞を持って走って来た。そこには昨夜の晩餐会で私が出演したニュースが報道されていた。それはネパール有力紙「ゴラカパットラ新聞」（国家の新聞）であった。昨夜の王宮ホテルでの出演に関し「ルーフ広宣によって、ネパールと日本の友好が更に強固なものになる! 」と言う内容だと聞かされた。 又、更に今日の「ルーフ広宣チャリティーショー（ Mｕｓｉｃ ＆ Mａｇｉｃ ）」について、その会場となる国際会議センター並びに開演時間なども報道されていたのだ!

　いよいよ午後は、チャリティーショー本番である。 連日のマジックショー出演と暑さで疲れもピークを迎えていた。しかし負ける訳にはいかない。余り寝付かれず睡眠不足の朝を迎えていたが気合を入れた!  インターバルも１時間程しかなかったが、ソファーに体を沈め、休むのが精一杯である。やがて迎えの車が来て、私は一気に熱いコーヒーを飲み干した。道具を詰め込み車に乗ると、午後の日差しが暑い。会場へと向かうが、人通りが多くてなかなか車が進まない。やっと会場入りすると、もうスタッフが準備をしていた。会場は３５０人位の国際会議センターであった。しかしスタッフがパイプ椅子をどんどん並べている。聞いてみると、来場者数は跳ね上がり６５０人分の席を造っていた!  既にテレビカメラもスタンバイしていた。私は音響チェックをスタッフに任せ、ネパールの大臣や主催者及びスタッフに挨拶をし、控え室に入り仕込みを始めた。日本大使も来られるとあって皆に熱気が走る!  現地の学生達も綺麗に化粧し、民族衣装に身を包み、皆が緊張を隠すように話に夢中であった。８つの団体で総勢３００人位が私のチャリティーショーのステージを飾ってくれた。ステージの後方には私の顔写真が（表紙の写真）大きく、美しくデザインされていた!

　チャリティーショーはネパール国に貢献した者に贈られる授賞式から始まった。ネパールの大臣らと共に私も壇上に上がる。既に会場は超大入り満員となり、人々の歓声が会場内を揺るがす程であった。満場の拍手の中、私は光栄にもネパール国文化大臣から表彰された!  ネパール・日本国交樹立５０周年の佳節に両国の友好交流に貢献したと言う事での受賞であった!  身に余る光栄に思わず手が震えた。表彰状は黄金色の金属プレートで実に美しかった。思えば私が初めてネパールに訪問してからはネパールの政情不安が急転直下、マオイストとの平和協定が実現するなど、考えられない程の速さで民主化となった。 それを思うと、私がネパールに来た事の意味も、時の不思議を感じてならない。常にマジックを通し不可能を可能にして見せて来た事が、彼等の心の中に不可能は無い!　と言うイメージを生む切っ掛けになればと願って来た!　精神を集中し、控え室で待つ私に、間もなく出番であるという知らせが来た。ステージでは華やかな踊りが披露されているのかバックミュージックが轟きわたり、私の控え室にまで聞こえて来た。私は全ての準備を終え、待っていると、スタッフが走って来て、「すみません、あと３０分位後になります」と言われた。それから待つ事１時間半、私はそこで思い出した。そう言えば前回もネパール時間と言われ、随分待たされたのであった。ここで言うネパール時間とは、例えば１時に待ち合わせたとする。しかし、来るのは３時頃というのも当たり前であると言うものだ。要するに時間があって無いようなものであったのだ!   やっと本番のGOサインが出て、私は入場口でスタンバイしていると、会場の熱気が凄く伝わって来た!  ネパール語は分らずとも、司会者のマイクから「ルーフ広宣」と聞こえ、ドアがパッと開かれた。

　　　　　　　　　　　　　　　　 　　

　 私は直ぐに場内に入場するなり爆音のような人々の歓声と熱いライトに照らされながらステージに立ったのである。私は想像以上の人々の乗りに圧倒された!  会場の最前列には日本人の留学生達が座って居たので、その中の一人をステージに上げた。又、来賓の日本大使にもお手伝いを頂き、私のマジックショーは最高潮に達していた!  民主化実現に向けて大きく動き出したネパールの人々は老若男女から子供までが大歓喜の心で溢れていた事が拍車をかけた。 拍手喝采の鳴り止まぬステージを無事に努め終え、背中で聞く大歓声こそ芸能を志す者にとっては芸人冥利に尽きる瞬間だった!

　　　　　　　　　 　　　　　 　

　　　　　　　　　

　そして私のネパールにおける全マジック出演は連日、ネパールの有力紙初め、数々の新聞に報道されていた。その他、テレビ中継は王宮ホテルでの晩餐会、及びチャリティーショー「Mｕｓｉｃ ＆ Mａｇｉｃ」が全ネパール向け番組となっていたのだった。

　これからも私のアジア訪問はまだまだ終わらない!  また、この誌面にてお伝え出来るかは未定だが、今年の１０月にはインドの首都ニューデリーでの国際フェアの出演。そして、北京オリンピックを控えた北京の劇場レストランでの出演。また、ネパールからも出演のオファーが来ている現在である。

　多忙なネパールでの行程も全て無事終える事が出来た。日本に帰国後、ネパール国が発行した「ネパール・日本国交樹立５０周年記念」の歩みを記録した政府刊行誌に私の功績が永久に記された事を知らされた!

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　今回この書面を借りて、私のネパールでの活動に全精力を捧げて頂いたネパールの兄弟：カピル・デブ・タパ氏。そして、この紀行文の編集に真心から協力して頂いた雨花先生に感謝申し上げたい。

　最後に一言　「マジック最高!! 」。

　　　　　　　　　　マジックとは、あらゆるものの集大成である！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ルーフ広宣